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浜松・佐鳴台のフランス料理店が35周年 開業後の苦難を乗り越え

店主の南竹英美さん(左)と妻・栄子さん(右)

店主の南竹英美さん(左)と妻・栄子さん(右)

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 浜松・佐鳴台のフランス料理店「エピファニー」(浜松市中区佐鳴台、TEL 053-448-8818)が4月に35周年を迎えた。

2面が開放的な窓で、昼間には自然光を取り込み明る店内

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 スイスやフランス、神戸のフランス料理店などで修業を重ねた店主の南竹英美さん。神戸で働いていた際、当時では珍しかった「地産地消」スタイルで、瀬戸内の魚を中心に料理を振る舞うことに衝撃を受けた。遠州灘の魚も負けないくらいいい素材だと考えていた南竹さんは、地元の食材を使った料理のフランス料理店を始めようと決意し、ソムリエの資格を持つ妻・栄子さんと共に1983(昭和58)年に独立開業した。

 開業以前は「店を出せば客は来る」という気持ちでいたが、1日に1組来るか来ないかの日々が続く苦しいスタート。客を呼び込もうと近隣の佐鳴台や蜆塚、山手町などを回り、チラシ配りも行った。半年ほどして新聞のコラムに取り上げられたことをきっかけに、徐々に来店客も増えていったが、コンスタントに来ることがなく、悪戦苦闘したという。

 「フランス料理は格式高いというイメージがあり、景気状況に左右されやすい。景気が悪いと料理や文化的要素に金をかけない人が多い。地方は特にそういう傾向が顕著だったと思う」と南竹さん。いつでもにぎわう料理店を目標にし、認知度を上げようと料理教室やワイン会なども開いた。スープのテークアウトや出張パーティー、お弁当など、「できることは何でもしてきた」と当時を振り返る。

 料理の研究を欠かさない南竹さん。栄子さんとフランスの3つ星レストランや東京の有名料理店を食べ歩き、レベルの高い料理店を基準に研究を行ってきた。仕入れにもこだわり、開業以前から浜名漁協の支所を回り、遠州灘や浜名湖で取れる魚の種類や値段を調べ、フランス料理に使えるかなどを勉強。漁協から新鮮な魚を直接仕入れる努力をしたという。「当時は仲買さんから『料理人は皆、地元の新鮮な食材を使おうと直接仕入れようとするが、大変で数年でやめてしまう』と言われた」と南竹さん。客足が伸びず、素材を腐らせてしまうこともあったが、新鮮なものへのこだわりを捨てず続けてきたという。現在も舞阪港で水揚げされた魚や篠原町で育った西洋野菜など、地元の新鮮な食材にこだわり料理を振る舞う。

 店舗面積は約33坪。テーブル27席。店舗の2面が開放的な窓で、昼間には自然光を取り込み明るく、周りの緑や自然を楽しめる空間。夜はカーテンを下ろし、落ち着いたおしゃれな雰囲気に変化するという。

 メニューは1,500円のAコースと2,500円のBコースの低価格帯のコースを用意。最初の料理は「とうもろこしのスープ・長野開田高原産」や「鶏もも肉のコンフィサラダ」、「舞阪産しらすのキッシュパイ」など7種類から選ぶことができ、メイン料理も「魚のポワレ・潮の香りのソース・三方原産じゃがいも添え」や「若鶏のもも肉の香草風味焼き」など5種類から選択できる。ほかにも予約制で、約1カ月ごとにメニューを変える「おまかせコース」(3,500円~)も用意。昼も夜も同じ価格のコースを提供する。南竹さんは「約10年前からフランス料理の格式高いイメージを払拭(ふっしょく)しようと低価格帯のコースも取り入れた。徐々にこのスタイルが浸透し、若い世代の客層も増えた」と話す。

 4月の開店記念月には特別なコースを提供。現在はホームページを印刷してきた人に限り、35周年企画としてハーブティー「ベルベーヌティ」のプレゼントも行っている。

 「客に喜んでもらえることが一番の喜び。35年の間には苦労も多かったが、専門料理の本の巻頭に掲載されたり、京都料亭の会合に使ってもらえたりとうれしかった思い出もいろいろある」と南竹さん。「長年続けていくことは簡単なことではなく、周りでも続けたくても続けられなかった同業の人も多い。どうしたら客に喜ばれるかを常に考えて努力してきた。体が続く限りこれからも頑張っていきたい」と意気込む。

 営業時間は11時30分~13時30分、18時~20時。水曜、第1・3木曜定休。35周年企画は5月31日まで。

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