「浜名湖養魚漁業協同組合」(浜松市中区馬郡町)が11月29日、浜名湖産の新しいブランドウナギ「でしこ」を発表し初出荷した。
125年の歴史を持つ浜名湖養鰻(ようまん)の技術を結集した新ブランドとして展開する。同組合に加盟する養鰻業者が指定された飼料を使い、稚魚から出荷まで浜名湖地域内で養育するなど、定めた条件をクリアしたウナギのみ「でしこ」として認定される。身も皮も柔らかく、脂が乗り肉厚な食感が特徴。ブランド名は「伝統を守り、進化を続け、幸福を届ける」の頭文字を取り、地元で親しまれてきたウナギの呼び名「めっこ」や「しんこ」に由来する響きも持たせた。当日は、約3トン12000尾を初出荷した。
浜名湖養鰻は、かつては稚魚のシラスウナギが豊富に採れ、そのエサとなる養蚕も盛んだったことから発展。東京都と大阪の中間に位置し流通に適していたこともあり、一時は生産量日本一を誇った。しかし、シラスウナギの不漁や価格高騰により近年は全国4位に後退。昭和40年代に400軒あった養鰻業者も現在は同組合に27軒のみが加盟する。産地衰退の状況に危機感を抱き、浜名湖産ウナギを日本一にしようと「でしこ」の展開を決めた。組合長の外山昭廣さんは「歴史ある浜名湖養鰻の最高傑作としてブランド化した。浜名湖ウナギを日本一おいしいウナギとして全国に届けたい」と意気込む。
同組合によると、「でしこ」は身も皮も柔らかく脂の乗りが良いとされるメスウナギ。養殖ウナギは養育過程で通常オスになるが、大豆イソフラボンを含む飼料を使うなど新しい養鰻技術によりメスに育つという。通常の養殖ウナギは晩秋から春にかけて身が固くなる傾向にあるが、「でしこ」は年間通じて安定的に供給できるという。
同組合では今後、浜松を拠点に販路を拡大し、クラウドファンディングも活用して全国展開を目指す方針という。外山さんは「浜松に訪れるきっかけとなり、地元の発展にもつなげたい」と期待を寄せる。浜松市内のウナギ販売店「うなぎの井口」社長の井口恵丞さんは「ウナギ専門店が多く、養殖から消費まで地域内で完結できるのが浜松の強み。まずは浜松の人に魅力を知ってもらいたい」と話す。