開発した小田凱人選手の競技用車いすの1号車を紹介する橋本社長
熱戦に沸いたパリ・パラリンピックで、橋本エンジニアリング(浜松市浜名区平口、TEL 053-587-6508)の開発した車いすが契約選手と共に活躍した。
契約選手とは車いすテニスの男子シングルスで金、ダブルスで銀メダルを獲得した小田凱人選手と同じく女子ダブルスで金メダルに輝いた田中愛美選手、車いすラグビーで金メダルを取った池崎大輔選手の3人。小田、田中両選手は競技用、池崎選手が日常用の車いすをそれぞれ使っている。いずれもマグネシウム製で、軽くて強いのが特徴。重さはスーパーマーケットや病院などで一時利用する車いすが約18キロ~20キロなのに対し、同社の競技用は10キロ前後、日常用が固定式で6. 8キロ。選手の要望に沿ってサポートする。
同社は自動車やオートバイなど輸送機器の部品加工など試作や検査を主力事業として展開しているが、2008(平成20)年のリーマンショックを機に会社としての生き残り戦略を模索。社内に開発グループを立ち上げて試行錯誤しながら検討する中、車いすに着目し開発に乗り出した。浜松エリアを中心にした中小企業と連携し長年培ってきた技術を生かして2011(平成23)年、金属製としては世界最軽量の商品開発に至ったという。
高齢者社会の進行による老老介護などが増えるなど車いすの利用ニーズが多様化する中、一般向け商品として、折り畳み式で重さ7.6キロの「X70」(44万8,000円)と固定式で6.8キロの「X60」(49万8,000円)をそろえる。一方、競技用車いすの開発は2017(平成29)年ごろに始め、2020年の東京パラリンピックで田中選手が、同社が手がけた車いすを使って試合に臨んだ。
パリ・パラリンピックでの3選手の活躍をテレビで観戦した橋本裕司社長は「金メダルの獲得には本当に驚き、うれしかった。感動のドラマに涙腺が崩壊した」と振り返り、「われわれがやってきたことは間違っていなかった。軽くてかっこいい、長く乗り続けられる車いすの開発に今後も力を入れていきたい」と話す。