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浜松まつり「たこ」製造店が存続危機 伝統の存続懸けて支援呼び掛け

多くの支援に感謝する、上西すみたや店主の大隅さん

多くの支援に感謝する、上西すみたや店主の大隅さん

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 浜松まつりの凧(たこ)製造店「上西すみたや」(浜松市東区上西町、 TEL 053-464-4000)と「一瀬堂際物(きわもの)店」(中区池町、 TEL 053-453-5050)が現在、経営存続を懸けてクラウドファンディングを行っている。

浜松凧を展示する上西すみたや店内

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 江戸時代に創業し、浜松まつりで使う凧を製造する両店。当初は、盆飾りや軒花(のきばな)など季節ごとの風習に使う際物と凧の製造を併せて営んできたが、1974(昭和49)年からの20年で、浜松まつりへの参加町が155町に倍増。凧の製造の需要が急増したことにで、現在は凧の製造を専門に行なっている。

 例年は、両店の合計で市内約150町の依頼を受け、200~250枚の凧を製造。凧を支える骨として使う竹の加工や和紙の制作など、翌年の開催に間に合わせるため浜松まつり終了後すぐに翌年に向けた仕込みに取り掛かっていた。そのため、コロナ禍において翌年の開催が不透明な中でも、人件費と材料費を投じて営業する必要があり、非常に厳しい経営状況が続いているという。新型コロナウイルスの影響を受け、昨年の浜松まつりは中止。今年は5月3日~5日に開催したが、開催規模の縮小の影響を受け、凧の受注は例年の1割程度と極端に落ち込んだ。

 凧の製造店の厳しい現状を知る松本剛さん(中区)をはじめとする有志の支援者グループは、「このままでは浜松まつりの伝統を支える凧の製造店が無くなってしまう」と懸念。両店に、クラウドファンディングによる資金支援を提案し検討。4月末に募集を開始した。

 リターン品には、浜松まつりの規模縮小の影響を受ける企業の商品や、両社の製造する凧などを用意。浜松の伝統産業である注染(ちゅうせん)染めで制作する「手ぬぐい」や、浜松まつりに参加する全174町の凧絵入りのオリジナルデザインの「マグカップ」を用意。凧は、観賞用に適した「半帖凧」や、まつりの本番でも使用できる「2帖凧」「3帖凧」のサイズを提供する。

 目標金額を200万円に定めており、現在180万円以上の支援金が集まっている。集まった資金は両店の事業継続のために充てる予定という。支援者からは「子供たちのために残すべき文化だと思い協力した」「大好きな浜松まつりが継続されるよう願っている」など、多くの応援の声が届いている。

 「先の不安が大きい中だが、たくさんの応援の声が届き、前向きな気持になっている。我々のことを大事に思ってくれている方のために、来年以降も事業を縮小することなく、期待に応えられるようにがんばりたい」と「上西すみたや」店主の大隅文吾さん。「一瀬堂際物店」店主の古橋道悦(みちよし)さんは「私たち凧の製造店のことだけでなく、浜松まつりの存続を心配してくれる方のおかげで、支援の輪が広がっている。支援者に恩返しができるよう、今後より一層の努力をしたい」と話す。

 募集は6月20日まで。

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