浜松ウォーターシンフォニー株式会社(本社:静岡県浜松市、代表取締役:内野一尋、以下HWS)は本日、浜松市公共下水道終末処理場(西遠処理区)運営事業の一部として管理する浜松市の西遠浄化センターにおいて、汚泥処理のプロセスで発生する熱エネルギーと水処理設備を活用した養鰻パイロット事業の開始を発表しました。
本事業の目的は、養鰻業を行うことではありません。下水処理場の維持管理を行う当社として、独自の着眼点から目的を設定しています。つまり、従来廃棄されてきた余剰熱や、既存の下水処理設備が持つ能力を新たに活用し、下水道事業における新たな価値創造の可能性を追求すること、また地場産業である養鰻業に化石燃料以外のエネルギーを使用するというサステナビリティ要素を付加することです。
本事業は施設を管理運営するHWS、施設の所有者である浜松市のバックアップ、浜名湖養魚漁業協同組合からは一般的な出荷サイズに満たないクロコ(原料うなぎ)の提供や技術的なアドバイスなど、三者のパートナーシップのもと実施します。
なお、パイロット事業期間中に養殖したうなぎは蒲焼加工し、すべて無料で配布することを予定しています。
本事業の特徴については以下のとおりです。
1.温水かけ流し式陸上養殖
下水処理場で発生する多量の余剰熱は大きなポテンシャルを有していますが、利用事例はまだ少ない状況です。本事業では、この未利用のエネルギーを活用し、加温した水をうなぎの水槽へかけ流すことにより化石燃料に依存しない、サステナブルな養殖技術の確立を目指します。また、この方式を取り入れるのは日本初の試みです。
2.低温排熱を有効活用
焼却炉の燃料である脱水汚泥はバイオマス由来の有機物であるため、焼却してもカーボン・ニュートラルです。100~300℃の中温排熱や300℃以上の高温排熱は利用されている一方で、100℃以下の低温排熱の利用は進んでいないのが現状です。この低温排熱をいかに有効活用するかが課題であり、今回のプロジェクトはそこに一石を投じることを期待しています。廃棄されている低温排熱を全量利用した場合、A重油換算で年間約1,300m?相当の熱量が得られ、この熱量を化石燃料の代替として活用できれば、CO2排出量を年間約3,500トン削減できる可能性があります。
3.本事業を通じた下水道および養鰻業への理解促進
浜松市の重要な産業の一つである養鰻業を今回の試みとして選択することにより、下水道と養鰻業に対して、市民により親しみを持ち、理解を深めてもらえることに寄与したいと考えています。
<図1:余剰熱エネルギーを有効活用した 温水かけ流し式陸上養殖イメージ>
本事業は、パイロット試験を実施し、これまでに実績のない高飼育密度での「温水かけ流し式陸上養殖」に対して、その技術的優位性や費用対効果などの検証を行います。
<図2:パイロット試験設備概略フロー>
*「日本初」の定義は、余剰熱を利用し、使用後の水を下水処理場で処分する方式のことを指します。
浜松ウォーターシンフォニー株式会社について:
浜松ウォーターシンフォニー株式会社は2017年5月に浜松市公共下水道終末処理場(西遠処理区)運営事業の履行を目的として設立されました。事業内容には西遠浄化センター、浜名中継ポンプ場、阿蔵中継ポンプ場に係る運転維持管理・修繕および改築を含む運営が含まれています。事業期間は2018 年 4 月 1 日から 2038 年 3 月 31 日。株主はヴェオリア・ジャパン合同会社を代表企業にヴェオリア・ジェネッツ株式会社、月島JFEアクアソリューション株式会社、オリックス株式会社、須山建設株式会社、東急建設株式会社の6社です。