浜松市勤労福祉会館(浜松市中区城北1)で7月20日、聴覚障害のある映画監督・今村彩子さんの講演会「映画で共に生きる社会を」が開催された。主催は、東三河研究センター。
講演は、地域の活性化を目的にインターンシップ事業を進めている「三遠南信地域社会雇用創造事業インターンシップ事務局」が企画したもので、会場には100人が集まった。
講演会で今村さんは、生い立ちや映画監督になったきっかけ、映画の楽しさなどを話した。今村さんは生まれつきのろうあで、家族にもろうあの人はいなかった。小学校時代は普通学校に入学したが、自分だけ耳が聞こえないために、学校で孤立しがちでいじめの経験もあったという。その後、ろう学校に転向して手話を学んだが周囲になじめなかった。
映画監督を志したきっかけは、字幕の付いたレンタルビデオ映画に心を奪われたこと。字幕のないテレビを見ても意味が分からず、これに気が付いた父親がビデオ映画を見せた。今村さんは「つらいことがあっても映画を見れば元気になれた」という。
その後、アメリカの大学で映画制作を学んで帰国し、ろうあ者のための手話通訳サービスが当たり前のアメリカと、サービスがない日本との違いに気付き、ろうあ者のメッセージを社会に伝えることを目的に11年前に「スタジオアヤ」を設立し、映画制作を始めた。
当日は、「デンソー」に勤務する260人のろうあ者が働きやすくなるための社内の取り組みを今村さんが描いた「サラリーマンライフ」も上映された。
今村さんが現在取り組んでいるのは湖西市の太田辰郎さんを描く映画。太田さんは、ろうあの当事者として日本で唯一のサーフィンショップ経営者。今後は撮影と並行して、日本各地で映画上映会を開いていくという。