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浜松・高丘西のカレー店が30年間の営業に幕 閉店悔やむ声多くも

牛肉が溶けるほど長時間煮込んだ「ビーフカレー」

牛肉が溶けるほど長時間煮込んだ「ビーフカレー」

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 カレー店「カレーハウス オータム」(浜松市中区高丘西、TEL 053-438-0526)が3月24日をもって閉店する。

店主の山下尊徳さん

 フレンチのシェフとして東京で働いていた店主の山下尊徳さんは、フレンチのアレンジを加えたカレー店を1990年に開業。29年間、同所で街のカレー店として営業してきた。昨年9月に管理会社から上階の水漏れや鉄筋の老朽化で建物を取り壊す話があり、今年3月末までに立ち退かなければいけなくなった。72歳の山下さん。体が続くまで店を続ける覚悟で営業してきたため、移転も考えたという。しかし、同所で営業していることに意義があると考え、思い悩んだが閉店を決断した。

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 「たかがカレー、されどカレー」をモットーに、庶民的なカレーにフレンチのアレンジを加えることで工夫して提供する山下さん。牛とポーク、魚、野菜の4種のカレースープを軸に、12種類のカレーを提供。「ビーフカレー」(1,250円)は牛肉が溶けるほど長時間煮込み、味わい深いカレーに仕上げる。「野菜カレー」(1,050円)は専用のブイヨンを作り8種類の季節の野菜を入れる。ほかにも「シーフードカレー」(1,250円)や「ポークカレー」(950円)、「ハンバーグカレー」(1,350円)なども用意。盛り付けは平皿の中央に1口ほどのバターライスをもりつけ、その上にカレーを少しかけるスタイル。メインの皿のほかに、ソースポット、レーズンとフライドオニオン、リンゴの入った追加のバターライスを木製ボールで提供する。客の好みでライスとカレーの分量を調節して食べることができる。創業当初からの独特な提供スタイルだが、現在でも「何だこのカレーは」と驚く客も多いという。全てのカレーに「らっきょ」と「ハリハリ漬け」、「マンゴーのジャム」、「刻んだゆで卵」がトッピングで付き、自分好みにアレンジして食べることもできる。

 創業当初は畑や田んぼが多く、道も舗装されていないほどの田舎だった。「なぜここで開業するのか」という声も多かったという。開業から約3年は認知されず、「こんな場所でおしゃれにしても受けない」と辛口批評もされ、資金面も厳しい日々が続いたという。しかし、信念を突き通しながら営業を続けていくと、盛り付けにもこだわる同店のスタイルが口コミで広がり、テレビや雑誌で取り上げられ、徐々に常連も増えていった。

 ヨーロピアンな昔ながらのビストロ風の同店。店舗面積は約15坪。カウンター10席、テーブル12席の計22席。照明は照度を落とし落ち着いた雰囲気を出す。粗塗りの壁やわざとゴツゴツとさせたレンガ調は山下さんのこだわりだという。客の約7割は常連客で、同店の味を好み、豊橋や豊川、掛川など遠方からの客も多い。常連客からは「なぜやめるのか」、「続けてほしい」など閉店を悔やむ声も聞こえてくるという。

 「長年続けて来たので、3世代で来てくれる常連客もいる。閉店を知ると、続けてほしいと声をかけてくれる人が多く、とてもうれしい」と山下さん。「続けたいという思いも当然あるが、この環境が好きで来てくれる客も多いので、ほかでは考えられなかった。ここまで多くの人に支えてもらえてきたことに感謝している」とも。

 営業時間は11時30分~14時30分、17時30分~21時30分。火曜定休。

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