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浜松・田町の老舗宝石店が閉店 街中の盛衰と共に94年

社長の前田さん

社長の前田さん

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 宝石専門店「前田宝石」(浜松市中区田町、TEL 053-453-0705)が12月20日、閉店する。

「前田宝石」のショーケース

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 現社長の前田健太郎さんの曽祖母(そうそぼ)に当たる松寿(まつじゅ)さんが1928(昭和3)年、「前田珊瑚(さんご)店」として中区神明町に創業した同店。松寿さんの出身地、高知県の特産品であるサンゴを中心に、真珠やべっ甲などの宝飾品を販売してきたほか、着物文化隆盛の時代は、かんざしなども販売していた。

 終戦後、現在の場所に移転して「前田宝石」として新装。1950年代には、繊維産業の好調を受けた「ガチャマン景気」を背景に街中もにぎわい、繁盛したという。問屋を介さず、国内外の製造元から宝石を仕入れて販売。「良いものをお値打ちに」をコンセプトに、日常使いから特別な日に身に着ける宝石まで幅広く取りそろえ、地域から親しまれてきた。中には家族3代で利用する得意先もあるという。

 前田さんは大学卒業後、名古屋のデパートに勤務して経験を重ね、約30年前に同社に入社。タイや香港などに自ら足を運び、海外からの買い付けに注力。不動産賃貸事業へ参入するなど勢力的に活動し、一時は現在の3倍の店舗面積で営業していたという。「宝石は1つとして同じものはない。生涯身に付けるような大切なものだからこそ、一人一人の来店客と深いつながりを感じられる。改めて良い仕事だと思う」と前田さん。

 近年は郊外型の商業施設が増えた影響もあり、中心市街地の人の流れも減少。宝飾品の原価高騰と円安の影響で、仕入価格も1.5倍近く高騰したという。不安定な状況の中で在庫を抱えるリスクを避け、店舗の閉店を決意した。

 今後はインターネット販売に主軸を置き営業を続ける。「『前田宝石』の名前を残すことが大事なので寂しさはない。時代の流れに順応して新しい挑戦をしていきたい」と前田さん。「店舗として94年間続けられたのは、地域の方にかわいがってもらえたおかげ。業態は変更するが、今後も地元宝石店として利用してもらえたら」と話す。

 営業時間は10時~18時。水曜定休。閉店までの期間は、現金精算を条件に店内全品を4~6割引きで販売する。

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