フランス料理店「ラ・サリーブ」(浜松市東区半田山、TEL 053-434-9966)が10月25日、オープン30周年を迎えた。
大阪で約17年間の経験を積み、フランスで1年修業した後、浜松の佐鳴台でフランス料理店を始めた店主の鈴木孝治さん。大阪の料理店でも使われるようなスパイスを生産する浜松に魅力を感じ、浜名湖では魚介類が豊富にとれることから、地元での出店を決意したという。
開業から1年後には結婚。妻と従業員1人の3人で営業を行ってきた。始めたころは浜松に本格的なフランス料理店が少なく、本場の味を知ってもらうことに苦労したという。「浜松の人は流行り廃りが早いように感じる。イタリア料理店など、多国籍な料理店も増えてきたことで、なかなか客が定着せず、集客にも苦労した」と鈴木さん。9年後に、夢だった自宅兼店舗を現在の半田山に構え営業開始。以前の店よりも、ジビエのとれる天竜や引佐に近くなり、情報が入りやすくなったという。
店舗面積は約15坪。席数はカウンター席3席、テーブル席20席の計23席。店内は天井を高くとり、開放感のある空間。梁(はり)をむき出しにすることで木のぬくもりも感じられ、季節ごとにテーブルクロスを変え、冬には赤いクロスで温かみを出す。
料理は、地元の野菜や浜名湖で採れた魚介類などを豊富に使う。浜名湖で採れたドウマンガニやアカザエビ、イセエビなど地元のおいしいものを食べてもらおうと、食材を生かした料理を提供することを心がける。三方原のジャガイモを使ったパンや竹炭のパン、牛乳パン、クルミパンなど、パンも手作りにこだわる。コースは肉料理と魚料理を選べる「5,000円コース」と、季節の旬の食材と使った「季節のコース」(6,300円)、店主おまかせの「おまかせコース」、客の要望を聞き、素材にこだわった「わがままコース」(12,600円~)の4種類をそろえる。
フランスでの修業先のシェフがジビエ料理のスペシャリストだったため、当時の経験を生かし、ジビエに力を入れる同店。当初は「臭い」というイメージがあり、敬遠する人も多く、本当に好きな人にしか食べてもらえなかったという。コース料理の肉料理を和牛とジビエの選択性にすることで、ジビエの魅力普及に努めてきた。天竜や引佐地方で捕れたイノシシやシカ、アナグマ、ノガモ、マガモ、カルガモなどのジビエを使い、仕入れる肉は、猟師が狩りをした後すぐに冷やすため、くさみがなくなり身がしっとりしているという。特にイノシシは一頭買いをし、鈴木さんが素早く下処理。脳みそのムニエルや、少量しか食べることのできない貴重な胃袋の煮込み料理、腎臓のスモークなど珍しい料理を提供する。
「30周年を迎えた日には多くの人が花を持って来店し、祝ってくれた。今まで当店で働いてきたスタッフも駆け付けてくれてとてもうれしかった。皆さんに愛され、喜んでもらえていることを実感できた」と鈴木さん。「昨年妻が先立ち、従業員もやめてしまったので、今は一人ではあるが、できる限りこの店を続けていけたら」とも。
営業時間は11時30分~13時30分、18時~20時(ラストオーダー)。火曜定休。