銭湯「巴湯(ともえゆ)」(浜松市中区大工町、TEL 053-452-7571)が2月26日、廃業する。
1947(昭和22)年に創業した同店。店主の市川佳代子さんの夫の両親が、同所に開業し、戦後間もない時期から浜松市民に親しまれてきた。平成以降は利用客が減り、設備の老朽化も進んだため閉店を決めた。
風呂の無い住宅が珍しくなかった創業当時は、開店前から行列ができるほど繁盛していたという。現在は重油を使うが、おがくずを燃料に、汗まみれになりながら湯を沸かしていた。入浴後は、まだ家庭に普及していなかったテレビを脱衣所で囲み、歓声を上げながら野球やプロレス観戦を楽しむ利用客の姿があったという。
男湯・女湯共に、約2坪の浴槽が置かれ、昭和の風情を感じる空間に湯けむりが立ち込める。瓶に入った牛乳は創業当時から今も販売している。生活様式の変化で利用客が減ったが、銭湯ならではの安らぎを求める常連客に支えられ、営業を続けてきた。市川さんは先代から番台を引き継ぎ、45年間務めてきた。「夏には『さっぱりした』と、冬には『暖まったから今日はよく寝られる』という喜びの声が何よりうれしい」と市川さん。
約40年前からほぼ毎日通っているという地元男性は「先代も今の店主も、気さくな人柄が何より魅力だった。無くなるのは本当にさみしい」と話す。豊橋市から来たという男性は「閉店すると聞いて駆け付けた。スーパー銭湯とは異なり、風情があり、ほかの常連客との会話を楽しむ社交場でもあった」と話す。
同店の廃業により、県公衆浴場業生活衛生同業組合に加入する市内の銭湯は1カ所のみになる。市川さんは「顔なじみの人たちと話す機会がなくなるのでさみしくなる」と惜しみつつも、「利用客との触れ合いが楽しく、いやいや働いたことがない。本当にいい仕事をさせてもらった」と笑顔を見せる。
営業時間は、16時~21時。月曜・木曜・日曜定休。入浴料は、大人=450円、小学生=180円、未就学児=90円。