パン・菓子メーカー「ヤタロー」(浜松市東区丸塚町)が11月1日、小説にインスピレーションを受けた新商品「TSUKI」の販売を始めた。
1948(昭和23)年創業のパン、菓子メーカーであり、バウムクーヘンブランド「治一郎」の製造販売のほか、レストラン運営・施設運営などを行っている同社。社員が、天竜区の県道360号線から見える「月まで3キロメートル」の標識を見かけ、文字のもつ力に魅せられた。それをきっかけに、同標識をモチーフとして書かれた伊予原新さんの小説『月まで三キロ』を読み、強いインスピレーションを受けたことから、月をモチーフにした商品企画が始まった。その中で、作者の伊予原さんに会うことができ、伊予原さんが「治一郎」を好きだったこともあり、小説とリンクする商品の開発が進展。同社が天竜区にある秋葉神社の秋葉茶屋を運営していることもあり、天竜が縁のある場所であることから、浜松、天竜、そして月という地域に密着したお土産として製造。今回、地域限定商品として発売にこぎ着けた。
地名の「月」、天体の月、小説『月まで三キロ』がリンクすることを考えて作られた同商品。小説の中に同標識がある場所で、月を見る主人公とタクシー運転手が登場する。同じ月であるにもかかわらず、絶望している主人公は「冷たい月」と感じ、運転手は空気が澄んでいる「良い月」と感じた。そこで、主人公が最後に見る月は「良い月」であってほしいという願いを込めて、同商品では明るく温かみのある黄色い満月を表現した。
土産として多くの人に楽しんでもらいたいと、日持ちするよう常温のベイクドチーズケーキを開発。水分量が多いと日持ちせず、水分量が少ないと口当たりがパサついてしまうため、そのバランスに苦労したという。地域に根ざした商品にしたいと、地元の名産品である三ケ日ミカンをチーズに練りこみ、チーズの香りとミカンの酸味を味わるよう仕上げた。チーズケーキのまわりは黄色いクッキー生地で覆っている。パッケージは、小説と合わせた青色に仕上げた。現在は静岡県立森林公園森の家でのみ購入可能で、今後は、近隣の道の駅や土産物店、天竜区の旅館などでの販売を行っていく。小説がモチーフになっていることもあり、書店とのコラボも検討している。
実際に商品を手に取った人からは「とても珍しい」、「パッケージが目を引く」といった声も聞かれ、小説のファンだという人からは「買いにいくので取り置きしてほしい」という連絡もあったという。「天竜区の『月』は神秘的で全国的にも目を引く地名だと思うので多くの人に知ってもらいたい」と観光事業部の菊池真実さん。「地元の方に愛されるお菓子になってほしい。そしてこのお菓子をきっかけにいろいろな人が浜松を訪れてくれたらうれしい」とも。
価格は、4個入り=600円、8個入り=1,200円(以上、税別)。