浜松市の男子中学1年生の二村翠さん(以下、翠さん)が、小児がんの治療で髪を失った子どもたちに自身の髪を寄付する活動「ヘアードネーション」を行おうと8月24日、市内の美容院で伸ばした髪をカットした。
美容師と共に髪を切る準備を整える美里さん(左)と翠さん(右)
「ヘアードネーション」は、ウイッグを必要とする抗がん剤や放射線治療で髪を失った小児がん患者に髪を寄付する社会福祉活動。元々肩に掛かるほど髪が長かった翠さんは、小学4年生の時に更に髪を伸ばしヘアードネーションするように父の真行さんから勧められた。当時は名前すら聞いたことがなかったが、「人の役に立つ事だと知ったので、髪を伸ばし始めた」と翠さん。一緒に髪を伸ばすことで力になれるだろうと考えた真行さんも、息子の挑戦を後押しするため同時に髪を伸ばし始めた。
女子のように髪が長いため、友人から「切った方がよい」と言われたり、外出先で男子トイレを使う時に周囲から指摘されたりと、心ない言葉で不快な思いをする時もあったという。しかし「人の役に立てることなので続けてきた」と強い志を貫き、約3年間の継続で翠さんの髪は長さ約60センチ、真行さんは長さ約30センチまで伸ばすことができた。
伸ばし始めた当初、髪を寄付する具体的な方法を知らなかったが、母の美里さんの知人で「浜松ひかりライオンズクラブ」(中区元城町)の広報担当の末広さくらさんから、同クラブがヘアードネーション活動を行っている事を知った。「ライオンズクラブ国際協会」は世界最大の社会奉仕団体で、国内には約3000クラブあり、10万人ほどの会員が所属する。「浜松ひかりライオンズクラブ」はそのうちの一つで、静岡県内で唯一女性だけで構成する。国内のライオンズクラブでは、小児がん患者の子どもたちが、より充実した人生や生活を送れるように願い、同活動に積極的に取り組んでいる。多感な時期にもかかわらず、人の役に立ちたいという翠さんの思いに感銘を受けた同クラブ。ヘアードネーションは、規定として31センチ以上の髪の長さが必要なため、髪の長さを確保できるタイミングを見計らい、今回のヘアーカットを迎えた。
当日は、市内の美容院協力のもとヘアーカット。翠さんの髪を切る前の髪を束ねる作業を美里さんも手伝い準備。自身で最初に髪にハサミを入れた後に、美容師により整髪。真行さんの髪のカットを、翠さんが恐る恐る挑戦する場面もあり、和やかな雰囲気の中で行われた。寄付するために束ねた髪の長さは、翠さんは42センチ、真行さんは32センチ。今後、同クラブを通じ、医療用のウイッグを作り寄付活動する「つな髪」(大阪市)に送る。
翠さんは「ひとつのウイッグを作るために、たくさんの人の髪が必要になるので、みんなにこの活動を伝えたい。そして、この活動で笑顔が増えてほしい」と笑顔で話した。真行さんは「小児がんの子たちの力になれてうれしい。息子はこの3年間で様々な経験ができたと思うので、今後の人生に生かしてほしい」と話した。「家族で協力して取り組んできた活動に感動した。このような素晴らしい取り組みが、今後さらに広がればうれしい」と同クラブ会長の河合よしさん。今後の活動の拡大に期待を寄せた。