臨済宗寺院「龍雲寺(りょううんじ)」(浜松市西区入野、TEL 053-447-1231)で現在、「金澤翔子書展」が開催されている。
「ダウン症の天才書家」として知られる金澤翔子さん。東京都出身で、5歳から母の師事で書を始めた。全国の神社仏閣で、大勢の前で「書」を書く「席上揮毫(せきじょうきごう)」を行い、個展も数多く開催。東京2020オリンピック・パラリンピック公式アートポスターの制作アーティストにも就任した。先代住職が常葉大学の学長を務めていた際に、映像担当の教員が金澤さん親子の専属のカメラマンだったことをきっかけに、今では住職の木宮行志さんと家族ぐるみで親交を持つようになったという。その縁から、10年ほど前に同寺で書の展示会をはじめ、定期的に開催。昨年はコロナ禍の影響で中止したため、本年は、昨年発表できなかった作品も合わせて展示する。
金澤さんが今年開催する展示会の中では最大規模のもので、前回開催時の作品からほぼ入れ替え、新作含む50作品を展示。「翔子さんの魅力は『仏のような心』にあると思う。偏見やこだわりを持つことなく、執着のないまっすぐな心で書き上げた作品は、私たちに何が大切なのかを教えてくれるように感じる」と木宮さん。境内の穏やかな雰囲気の中で、ゆったりとした時間を過ごしながら作品を楽しめる。
般若心経を10節に分け、1年に1作品ずつ制作し、10年計画で完成を目指す「般若心経 一節」は、びょうぶに仕立てた作品。4年前から取り組み、今回は3年目と4年目に手掛けた一節をそれぞれ展示する。同寺はおととしの開催時、来場者に向けて「翔子さんに書いてほしい文字」を募集する企画を実施。その中から金澤さんが選んだ文字を実際に書いた、「一心」や「一日一笑」などは全て新作となる。今回も来年の開催に向けて投票企画を行う。このほか、東日本大震災の年に被災者の無事を祈り書いた「共に生きる」などを展示。2015(平成27)年に奉納した、縦4メートル、横16メートルの「世界一大きな般若心経」も、常設展示として見学できる。
新型コロナウイルス対策として、来場時に手指消毒、マスク着用を求める。席上揮毫(きごう)やサイン会などのイベントは開催しない。来場者に、ソーシャルディスタンスを保つように呼び掛ける。
木宮さんは「コロナ禍の影響で人々の心がすさみ、他者への寛容な心が無くなりつつある中で、書展を中止するのではなく、翔子さんの作品を見てもらいたかった。翔子さんの心を見て感じてもらうことで、以前より落ち着いた心を持てるようになってもらえたら」と話す。
開催時間は9時30分~17時。入場無料。10月3日まで。