企画展「新・山本二三(にぞう)展」が現在、「浜松市美術館」(浜松市中区松城町、TEL 053-454-6801)で開催されている。
山本二三さんは長崎県五島出身の美術監督・背景画家。24歳で「未来少年コナン」の美術監督に抜てきされた後、「天空の城ラピュタ」「もののけ姫」「火垂るの墓」といったジブリ作品の背景画を手がけた。細田守監督の「時をかける少女」や新海誠監督の「天気の子」でも背景画を制作し、日本のアニメーション界を支えてきたという。
2014(平成26)年に静岡市美術館が開催した「山本二三展」から約10年を経た同展の展示総数は約230点。約60点を追加した。描かれた背景のジャンルごと分類した5部構成で、初期から最新作までの手描き背景画、未公開の美術設定やイメージボード、実際に使っていた絵の具「ポスターカラー」、筆、参考書などを展示する。学芸員の児玉実佳さんは「夏の展示にふさわしい、子どもから大人まで親しめるような内容になっている」と話す。
浜松限定の公開となる「桜舞う浜松城」は、主催の浜松市と静岡第一テレビが、浜松市の風景を描いてほしいと山本さんに依頼し3月に完成。作品をプリントした「クリアファイル」(150円)、「ポストカード」(100円)も販売する。
雲を描いた空の背景の上に、カッターで切り抜いた建物を乗せた「ブック」という技法を使った作品「荒廃したラピュタ」は、背景の雲が動かせるように工夫。アニメーション界では広く知られる「二三雲」と呼ばれる表情豊かな雲の表現に注目した展示エリアでは、雲を描く様子の映像を流す。「アニメの背景画は実際に見ると想像より小さいサイズで驚くと思う。細部まで正確に描き込まれているので、隅々まで見てほしい」と児玉さん。カメラワークの都合から横長に描いた作品「シシ神の森」などアニメ背景画ならではの作品も見どころという。「映像での映り方を想像しながら見ても面白い。本来いるはずのキャラクターがいない背景画を見ることで、見る人自身が物語の世界観に没入してもらえたら」と期待する。
会場にはフォトスポットを2つ用意し、作品の登場人物になったような写真を撮影できるようにしたい。イヤホンを着けて展示を見る「音声ガイド」(600円)では「もののけ姫」でアシタカ役を務めた松田洋治さんが同展を紹介する。開催初日には、山本さんの息子の山本鷹生さんが制作の裏話などを話す講演会を行い50人以上が来場した。7月23日には同展を監修した久慈達也さんによる「キュレータートーク」、8月6日にはアニメーションの仕組みが学べるワークショップ「ゾートロープ制作」を開催する。
「完成度が高く1枚の絵画としても楽しめる。他の企画展に比べて滞在時間が長く、じっくり見てもらえている」と児玉さん。「日常の風景やファンタジーの世界など、まるで実在するかのようにリアルに表現されている。日本のアニメを世界へとけん引してきた実力をこの展覧会で知ってもらえたら」と話す。
開催時間は、キュレータートーク=14時~15時。ゾートロープ制作=10時~12時、14時~16時。ゾートロープ制作はウェブサイトで事前申し込みが必要。
開館時間は9時30分~17時。7月18日・24日・31日・9月4日は休館。入館料は、大人=1,200円、高校生・大学生・専門学生=800円、中学生以下=無料。9月10日まで。