見る・遊ぶ

浜松・田町のミニシアターが10周年 浜松唯一のアート系映画館として

館長の榎本雅之さん

館長の榎本雅之さん

  •  

 ミニシアター「シネマイーラ」(浜松市中区田町、TEL 053-489-5539)が12月5日、10周年を迎えた。

 1988(昭和63)年、浜松東映劇場が板屋町から田町に移転。以降20年同所で営業してきたが、TOHOシネマズ浜松やTOHOシネマズサンストリート浜北ができ、他館で東映映画の上映館ができたことや、同館の賃貸契約が20年だったことを理由に2008年10月に閉館した。

[広告]

 当時館長を勤めていた榎本雅之さんは浜松東映のレイト枠でアート系映画の上映をしてきた。30年前は街中に約10件あった映画館も、浜松東映閉館時には3軒に減り、アート系作品を上映する映画館はほかになかった。アート系作品を上映する映画館を自分がやるしかないと思った榎本さん。同社会長に話したところ、設備を無償で譲ってもらえることになった。

 同社を退職し、会社を立ち上げた榎本さん。地元企業や支援者から資金提供もあり、館内を改装。222席あった客席を152席まで減らし、前後左右の空間を広げゆったりとした客席にした。スクリーンは横幅約6メートルあり、ミニシアターにしては大きなスクリーンだという。

 ドキュメンタリー映画「靖国」を初上映映画としてオープン。始めてすぐは客も定着せず、映画のデジタル化が進む業界の過渡期でもあったため、苦しい営業が続いたという。しかし、早期にデジタル化に踏み切り、フィルム映画とデジタル映画の両方を上映。2013年に映画「楽隊のうさぎ」のプロデューサーを榎本さんが担当したことで「映画館が作った映画」とマスコミが取り上げ、映画館の知名度も向上。その後はアカデミー賞の外国語映画賞や長編ドキュメンタリー賞受賞作品、映画雑誌ランキングに載るような話題作も上映できるようになった。

 榎本さんは現在65歳。全国のミニシアターは「経営者の高齢化」と「設備の老朽化」、「客の高齢化」の「三老」問題に直面しているという。年間約150本の映画を上映し、過去3年は年間約5万人の来館者数を数える同館。「現在安定しているようにも思えるが、未来は見えない」と榎本さん。「若者の映画離れも深刻。大学で講義をした際、学生に『映画館で映画を見たことがない人がいるか』と質問したところ、ほとんどの学生が手を挙げた。映像機器の発達や動画配信サイトなど、映画が身近なものとなりすぎてしまい、わざわざ映画館に足を運ばない若者が多いのではないか」と話す。

 10周年を迎え、常連客からは手作りの花で形作った「祝」の文字が贈呈された。榎本さんは「こういった温かい客に支えられている」と話す。12月16日には記念パーティーを開催予定で、浜松出身の映画ジャーナリスト・大高宏雄さんとの映画トークバトルを繰り広げるという。

 10周記念パーティーは、会費=6,500円。同館受付でチケットを販売。チケット受付は12月10日まで。